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2014年9月

九龍城・ヘルパトロール・クエスト

 自分の生涯で「取り返しがつかない!」という現実をつきつけられたのは、やっぱあれだ。寝坊とか遅刻とか酒とか色恋とかあれやこれやよりあれだ----ドラクエで村に戻ってみたら、村人が「・・・・・」になっていた、ということ。

 RPGでは「話をきく」(情報収集)が攻略上とても大事だし、面倒でもこまめに村人に話かけていれば新しい発見もあって展開も広がるし。それが、ある時をさかいに、誰も「・・・・」としか。あの喪失感、絶望感、そう、取り返しのつかなさを久々に骨身に沁みるまで味わわせてくれたのが 2014年core of bells月例企画『怪物さんと退屈くんの12ヵ月』  の第八回公演「子どもを蝕む“ヘルパトロール脳”の恐怖」だったんだよな。

 まだ天候不順が本格化する前で、夏らしく蒸し蒸しとした六本木の夜の地下に、けっこうな観客がひしめいて、まずはしちめんどくさいルール説明(ゲームピースぽくて、罪人と鬼、それも赤鬼と青鬼がいるとかなんとか)を延々と聞かされていると、そういう説明を真剣に聞かないことも、都会の夜のエンターテイメントの一部であるとするような堕落的な空気が蔓延していたその夜のSuper Deluxe。

 さて、ゲームのはじまり。昼はクエストし、夜は目をつぶって足踏みさせられる。この足踏みが苦痛と快楽のあわいのやや苦痛より-----汗ばむことも、隣の人と体がふれあうことも、蒸し暑いことも、匂い、吐息、なんやかんや全部のゾワゾワ感----どうでもよくなってくるが、りちぎに足踏みをする。やがてチチチ。。。と爽やかな小鳥の声がして(いかにもなサウンドエフェクトとあからさまな照明効果) 朝だ! クエストせねば! メモをとる、あるいはメモをとるふりをする。やるべきことはいろいろある。狭い通路をくぐるとか、よく見る「怪しげな人」をチェックするとか。片手にはめた軍手がとっても「蒸し暑い」---これが罪人あるいは鬼、といった身分証だ。他人には見せないけど心に刻印された仮面ライダーのアイデンティティみたいなん。

 ーーーーこれはRPG空間だ

 そう思い至った私は、もうその参照枠から逃れられなくなっていた。純粋に出し物を楽しむだの無心で体験するだのはお留守。でも、程度の差こそあれ誰もが「参照枠」をはめながらものを見聞きしてるんじゃないかしら。今回の場合はRPGで、その中でも過去にプレイしたかなり癖のあるプレステ用の「クーロンズゲート」を反射的に参照していた。

 ペラペラな素材で作られた通路のどんづまりに座っている「鬼」。ただの仮装だ。演劇どころか高校の文化祭以下の扮装。顔を赤く塗ったり青く塗ったり、赤と青のツートーンに塗り分けた鬼もいる。ムラのあるお化粧に貧相な衣装。だけど、とても

 ーーーー怖い

 いにしえのゲーム クーロンズゲート  は、香港にあった九龍城を舞台にした実に不気味なRPGで、風水陰陽五行の基礎知識がないと魔物(鬼律と書いてグイリーと読む、超こわいヤツ!)に勝てない。その路地奥にいる老人は料理人だったり理髪店主だったり仕立て屋だったり(三刀)するのだが、それが英知を授ける。授けてくれる。そうわかっていても話しかけるのが恐ろしいほどのJPEG造形。ま、顔が佇まいが不気味すぎるんすよ。でも彼らに知恵を授けられ、ダンジョンに潜っては打ちのめされ(思いっきり怖い思いをして)また戻ってまた話きいてまた潜って……で、ある時点で、その路地に戻っても完全な無人である。たまたま留守してるんじゃない。もう永遠に取り返しのつかない無なのだ。無人なのだ。無人くんなのだ! と思い知る。そんな90年代の自宅でのめり込むようにゲームしていた自分の親指の力の入れ具合がフラッシュバックしたんだな、あのペラペラのプラスチックで組み立てられたダンジョンの奥の鬼に。

 

 足踏みさせられることも、それで汗ばむことも、隣の人と体がふれあうことも、蒸し暑い、匂い、吐息、なんやかんや全部どうでもいい! ひたすらな足踏みと、やがてチチチ。。。小鳥の声。。。最初は焦り気味にクエストするも、何度か夜昼を繰り返すともう朝になっても面倒でだるくてどうせ部屋(ダンジョン)も解体されて数が減って村人は「・・・・」としか言わなくなり、もう自分の人生取り返しつかない。あの時、もう一度彼に話を聞いておけば!といまさら取り返しつかない取り返しつかない、ああ、取り返しつかない!! と、そればっか。

 そうして気が遠くなった頃にダンジョンは解体されつくして広場となり、全員が亡者よろしく足踏みをしたかと思うと、世界がかわって恒例らしい「コアベルのBGMアワー」となる。さ、もう安心してビール(Super DeluxeだからTOKYO ALEとか)を呑んで緊張感のない会話をしたっていーんだ、という「ほどけ感」を味わう。いままでの手の込んだ?くどいほどの?イライラさせられるような?すべては、このビールタイムのための前戯であった、と強く思う。

 結局、ルールについてはわからないままだまくらかされたまま、高みにセットされたドラムセットが打ち鳴らされることもなく(それを叩くはずだったろうドラム担当のメムバーは、白粉をぬって気味悪い女郎お化け姿で解体されつつあるダンジョンをよろよろしていた)、手際よく撤収するスタッフがたてる物音を肴に、観客はビールを干して安堵の吐息をつく、んだよな。

 帰り際、「あなたは罪人でしたか?」と、たびたび小部屋で私を疑いの目でにらんでいたような年上の女性に声かけてみた……ら、彼女は実は女郎お化けのご母堂で、一緒に楽しく会話しながら、六本木駅まで歩いたのでした~。

 さてさて、こんなレビューじゃこれじゃよくわかんないっすよね? もっとちゃんと何があったか知りたい!という方は、ぜひ木村覚氏のreview をご参照ください!

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